営業時間 / 10:00 〜 17:00
定休日 / 土・日・祝日

依頼者様の人生・会社経営の最高のパートナーでありたい。

依頼者様の人生・会社経営の最高のパートナーでありたい。

資金面での不安を感じているのですが、もし自己破産などをする場合は自宅から出ていかないといけないのでしょうか?

資金面での不安を感じているのですが、もし自己破産などをする場合は自宅から出ていかないといけないのでしょうか?

2020.5.2

自己破産をする場合には、保有している財産を換価し、債権者に配当することになります。
そのため、原則として破産手続内で不動産を売却されることになり、自宅を手放さなくてはなりません。
 
しかし、一定の場合には破産手続をしつつも、自宅から出ていかなくてもよい場合もあります。
 
■①第三者が適正価格で購入してくれて、それを破産者に賃貸で貸してくれる場合
 
・自宅不動産の価格がいくらか
・自宅不動産に担保権が設定されているか否か
・ローンがある場合には残債務がいくらか
・協力してくれる第三者を見つけられるか
等々の様々な要素を考慮し、好条件が重なる場合には、自己破産しつつも適正価格で第三者に自宅不動産を売却して自宅に住み続けるという手段を採ることができる場合があります。
もちろん、この方法を採った場合、不動産の所有者の名義自体は変わってしまいますが、例えばご親族が購入してくれるような場合であれば実質的には問題なくご自宅に住み続けることが可能となりますので、自己破産をする前後で検討すべき手段の一つではあります。
 
ただし、注意点としては、必ず「適正価格」(法律上は「相当の対価」と表現されています。)で売却し、売却によって得た代金をその不動産の担保権者に返済してもなお余剰金がある場合には、この余剰金をきちんと保管し、破産手続の中で他の債権者に法律に従って返済する等していく必要があります。
これは、不動産が現金に換わってしまうと資産隠し等が容易になってしまって債権者が困ることになるという理由で、法律が原則として不動産を現金化することは許容していないためです。
きちんとルールを守らなければ、協力してくれた第三者の方に対する裁判等が提起されてしまうなど、大きな迷惑をかけてしまう可能性も出てきます。
したがって、このような方法を採る場合は、せっかく協力してくれた第三者に迷惑がかかってしまう結末を避けるためにも、弁護士等の専門家に相談しながら手続を進めるようにしましょう。
 
cf.民法424条、424条の2
 
第424条(詐害行為取消請求)
1 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。ただし、その行為によって利益を受けた者(以下この款において「受益者」という。)がその行為の時において債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。
2 前項の規定は、財産権を目的としない行為については、適用しない。
3 債権者は、その債権が第一項に規定する行為の前の原因に基づいて生じたものである場合に限り、同項の規定による請求(以下「詐害行為取消請求」という。)をすることができる。
4 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、詐害行為取消請求をすることができない。
 
第424条の2(相当の対価を得てした財産の処分行為の特則)
債務者が、その有する財産を処分する行為をした場合において、受益者から相当の対価を取得しているときは、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。
① その行為が、不動産の金銭への換価その他の当該処分による財産の種類の変更により、債務者において隠匿、無償の供与その他の債権者を害することとなる処分(以下この条において「隠匿等の処分」という。)をするおそれを現に生じさせるものであること。
② 債務者が、その行為の当時、対価として取得した金銭その他の財産について、隠匿等の処分をする意思を有していたこと。
③ 受益者が、その行為の当時、債務者が隠匿等の処分をする意思を有していたことを知っていたこと。
 
■②当該不動産に設定された担保権の残債務額が不動産の価額に比して過大なとき
 
この場合には、自宅には価値がないものとして、自己破産手続における換価の対象ではなくなります。
 
cf.大阪地方裁判所において価値がないと評価される基準
・「2<当該不動産に設定された担保権(抵当権等)の残債務額÷固定資産評価額」のとき
・「1.5<当該不動産に設定された担保権(抵当権等)の残債務額÷固定資産評価額≦2」かつ「1.5<当該不動産に設定された担保権(抵当権等)の残債務額÷不動産の査定書の価額」のとき
 
■③何度か競売を試みたが、買い手がつかなかったとき
 
この場合には、換価が困難ということで、換価されないまま自己破産手続が終わる可能性があります。
もっとも、このような場合で自己破産手続内で処分されなかったとしても、自宅に住宅ローン等の抵当権が設定されている場合には、通常はその抵当権者によって自宅不動産を競売にかけられることになります。
 
 
以上のように、最初の①の手続を採ることができずに自己破産をする場合には、自宅を残すことは難しいと考えておく方が良いでしょう。
しかし、自宅を残しながら債務を整理できる手続もあります。
 
■個人再生(民事再生)
 
個人再生は、自己破産と同様、裁判所を利用する手続です。
他方、自己破産とは異なり、債務の一部を債権者に分割で支払うことを条件に、自宅や自動車を手元に残すことができます。
 
支払わなければならない債務としては、住宅ローン全額とその他の債務の一部(債務額により異なりますが、5分の1程度が目安)があります。
自己破産の場合には借金の全額を返済しなくてよくなるため経済的なメリットは自己破産の方が大きいですが、自宅を残したい場合には個人再生が有効な手段といえるでしょう。
また、会社経営者の方であれば、会社は自己破産手続によって倒産させつつも、代表者個人については個人再生手続を申し立てて、一定の財産を残すという選択肢もあります。
なお、この場合には債権者へ若干の返済をできる一定の資力が必要となりますので、経営の再建が難しいと判断した早めの段階で弁護士などの専門家に相談されることをお勧めします。
 
■任意整理
 
任意整理は、各債権者と裁判所を介さず任意で利息等の免除やリスケ等を行うものをいいます。
任意整理は、自己破産や個人再生とは異なり、裁判所を介さない手続です。
 
任意整理の場合には、抵当権者に競売にかけられない限りは、自宅を強制的に処分される可能性はありません。
任意整理のデメリットとしては、任意整理は各債権者と合意が成立させることが前提となりますので、任意整理に協力してくれない債権者が1つでもあると任意整理をすることはできない点にあります。
また、任意整理をする際には、利息や遅延損害金を免除してくれることは多いですが、元本を免除してくれることは少ないため、うまく交渉を行うことが必要となります。
さらに、任意整理は、裁判所を介さないものの、手元に残存する返済原資と、各債権者への弁済額を調整しながら交渉を行っていくことになりますので、相応の労力や時間が必要となる場合も少なくありません。
必要な資金についても、各債権者が納得する金額を返済することが前提の手続ですので、自己破産や民事再生に比べてより多くの資金が必要となることも多いです。
 
■まとめ
 
以上のように、必要な資金としては、任意整理>個人再生(民事再生)>自己破産ということになりますので、できる限り資産を残したいというのであれば、資金が完全に枯渇してから専門家に相談するのでは手遅れと言わざるを得ません。
実際にも、弁護士のところに相談に来られるケースの中には、資金が完全に枯渇しており、自己破産手続さえも執れないという絶望的なケースもあります。
 
このため、ある程度の資金が残っている段階で、現状のままの事業や生活を継続していくか何らかの手続を執るかについて、正しい知識・情報を基に検討することが有益です。
また、事業をしている場合には、早期に対策を進めれば、M&Aにより事業を継続しつつ個人の連帯保証債務を消滅させることができる場合もあり、よりよい解決を実現できるケースもあります。
現状を継続していくことに資金的に不安を感じている場合は、お早めに弁護士等の専門家にご相談なされることをお勧めします。

よくある質問一覧へ

TOP